環境への取組み

世界農業遺産の認定 国東半島・宇佐地域

クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐地域の農林水産循環

 食料の安定確保を目指す国際組織である国際連合食糧農業機関(FAO:本部はローマ)は、グローバル化、環境悪化、人口増加の影響により衰退の途にある伝統的な農業や文化、土地景観の保全と持続的な利用が図られている地域を「世界農業遺産」に認定しています。

似たような制度であるユネスコ世界遺産(文化遺産)は、遺跡や歴史的建造物などの「不動産」を登録、保護するのに対し、世界農業遺産は次世代に継承すべき伝統的な農業の「システム」を認定し、その保全と持続的な利用を図るものです。

10~20年毎に伐採を繰り返すクヌギ林では、持続可能な森林利用が行われている

 効率的な土地・水利用が実践され、豊かな農村文化が形成されている国東半島宇佐地域では、豊かな農林産物と生態系をもたらすクヌギ林とため池による循環型農林業が行われており、2013年(平成25年)5月30日、FAOから世界農業遺産(GIAHS)に認定されました。審査員は、木から食料が生産されることに大変驚いていました。

 10~20年毎に伐採を繰り返すクヌギ林では、持続可能な森林利用が行われている

 この地域では、クヌギを利用した原木しいたけ栽培が伝統的に行われています。クヌギは林を形成し、しいたけの生産に必要な栄養源として栽培に利用されています。クヌギ(森林資源)が原木しいたけ(食料)を産み出すシステムは、耕地が限られたこの地域において、栄養・農村経済の面で大きく貢献しています。さらに、原木しいたけ栽培が行われることで、クヌギ林の伐採と再生が繰り返され、森林の新陳代謝を促し、水資源のかん養など森林の公益的機能の維持が図られるとともに、里山の良好な環境や景観保全を形成しています。

土砂流出・崩壊防止などの公益的機能

 県内には、原木しいたけ栽培のために造成されたクヌギ林が47,000ha広がっています。しいたけ栽培に利用することで、上述したような森林の公益的機能のほかにも根が地中深く垂直に張る(直根)ことから、土砂流出・崩壊防止などの公益的機能が高く、防災上で役立っています。また、多くの有機物や栄養塩を含んだ水は河川を通して沿岸に流れ込み、豊かな海を形成しています。

▲クヌギの新芽

自然との共存

 しいたけ栽培は、山で10~20年育てた主にクヌギの木を使います。乾しいたけ生産は栽培過程で化学肥料や農薬を使用しません。また、しいたけの発生は約4年間でほぼ終了しますが、これは木材腐朽菌の一種であるしいたけ菌が、木の持つ栄養分を分解し終えたということです。重たく堅かった木も、しいたけ菌の分解作用によって軽く、手で潰せるほどに朽ち果てます。役目を終えた榾木は山で土に還り、木の養分として再利用されます。この廃榾木を積んでおくと、カブトムシがよく産まれますが、まさに自然の一部に還ったわけです。

 私たちは、自然の営みの一部をしいたけ栽培という産業に利用させていただいただけなのです。私たちの産業は、里山に暮らし、生態系に負荷をかけず、自然と共存していけること、それを私たちは誇りに思っています。

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